統合失調症について 2017/5/18

 今朝も37度の熱! しかし、きょうは、なんて晴れ晴れとした気分なのだろう! 昨日の夕に比べたらなんという戦意の高低差が生じていることか!
 おれは昨日の昼から夕方にかけて、ひどい神経衰弱に陥っていた。ある程度は体調の悪さのせいもあるかもしれない。だがいままでにない自害への欲望と苦役への嫌悪が募っていた。そしてなんだか道行く人たちがおれをジロジロ見つめている気がしたし、急におれの本名を呼んだり、おれの思考を先読みしてそれを先に口に出したりしていると思われるような瞬間が幾度もあった。これは統合失調症というやつだ。自覚症状がある。おれは思わずグーグルで「統合失調症 初期症状」や「統合失調症 自覚症状」、「統合失調症 原因」などと検索してしまった。不運なことにおれはこんな時の助けになるリスペリドン内服液を所持していなかった。四方を壁に囲まれたような閉塞的な絶望感に苛まれた。ついでに金パブも切らしていたので、エフェドリンで空元気を出すこともできない。
 おれは統合失調症じゃないのか。ついにコイツが、噂に聞くあの恐ろしい病が、おれを襲い来たのではないのか。凄まじい恐怖に責め立てられる。
 タイミング悪く、おれは内藤と秋葉原で会う約束をしていた。精神状態がこんなだし、熱があるし咳も止まらないしで、とりあえずドタキャンはしないにしても、会って「悪いがきょうはダメだ」と一言詫びようと思った。だからおれは秋葉原で電車を降りた。駅構内の喫煙所で一服してから、待ち合わせ場所のヨドバシ前で内藤と合流する。おれが周囲の人間たちの視線を恐怖して、極端に猫背になって歩いていたせいか、内藤の背丈がずいぶん高く見えた。おれは伝えた。「熱がある」「金がない」「きょうはダメだ」。内藤は言った。「飯を食え」「金はある」「おれに気を使うな、事前に会談をキャンセルしたってかまわないのだ」。心の広い男だ。おれたちは金の蔵に入った。そこでおれはソフトドリンクとカロリーの高い食事を食った。内藤のおごりだ。実にありがたいことだ。会話はそれなりに弾んだ。おれもはじめは相づちを打つのが精一杯というところだったのが、カロリーを胃にぶち込むにつれて言葉が次第に出てくるようになった。
 会話の流れのなかで、内藤は言った。「最近文章は書けているのか」。おれは答える。「ダメだ。書けない。心身がこんなだ」。内藤は、「それではいまの状況、苦役が辛いだろう。デビューのための踏み台に過ぎないただの通過点であるその労働の苦しみが、いたずらに増大する」。おれはハッとさせられた。なるほどそうだ。
 おれの生活は苦役とおれ自身の希望に満ちたビズとの両輪から成り立っている。そしておれの全生活に駆動力を与えられるのは後者のほうだ。バイクで言うところの後輪が執筆である。苦役はただただ転がる前輪に過ぎない。後者が上手く行けばおのずと前者の苦しみは減じる。それだけ前者への執着心、つまらない欲望、不満、そうしたものが無視できるようになるからだ。
 こんなことは前々から了解されていたことだ。おれのなかでも何回も自分に言い聞かせてきたことだ。しかしいま改めて友人の口からそれを聞くと、不思議と凄まじい説得力が生じるのだった。そしておれ自身その言葉を素直に、病んだ胃に優しい粥のように吸収した。
 「我働かんかな!」この言葉はおれの生活の、「執筆」の部分に捧げられるべきものだ。それだけでおれの生活はたいてい上手くいく。おれが複雑奇怪に考え過ぎていた。simpleだ。おれの現状はごくごくシンプルだ。書く。勝つ。以上。そうではないか? それ以外にありえるか? 否。否だ。
 おれは内藤を軽薄で陽気なだけ男と考えていた節がある。しかし稀にこうしておれに致命的な「気づき」を与えるから、決して決して侮ることのできない奴だ。
 考えても見よ、ダンテスは20代を牢獄で過ごした。ダルタニャンは友人たちと別れ、20代を末端の銃士として過ごさなければならなかった(それは彼の野心を満足させるものではなかった)。デュマは彼の愛するfiction上の若者たちを、すぐに成功を勝ち取り幸福の境地に至らしめはしなかったのだ。おれだとて銃士、財布は軽いが剣は長いという男。財布は軽くていい、だがせめて、剣だけは、ペンだけは、長くありたいものじゃないか?
 内藤の言葉はおれに強烈な影響を与えた。それは彼にしてみたらたいして意識もせずに発した会話の一端に過ぎなかっただろう。それでもおれにしたら、間違いなく一つの福音だったのだ。おれは彼に感謝してもしきれない。おれは書く。そうしてすべては上手くいく。
 それから内藤とマルスピュミラへ行った。

 エクセ前でくおんを回収する。くおんと楽しくお喋りした。くおんはいつも「たけるんは素直に私を褒めてくれるから嬉しい」と言うが、くおんの方こそ嬉しがらせをたくせん言ってくれるのでたまらない。内藤もくおんをかなり高く評価していた。ヨドバシ前で二人で喫煙してから内藤と別れ、家に帰ってシャワー浴びて寝た。
 18日(きょう)は内藤の金言の功徳もあってか、比較的穏やかで快適な心持ちで過ごした。はからずとも苦役の方が捗ってしまった。しかし夕方から抑えようのない苛立ちと焦燥感に駆られた。金パブとコーヒーを飲み過ぎてカフェイン過剰の状態にあったのかもしれない。代々木駅で●●からクサノオウを受け取る。中央線のなかでエチゾラムを舐める。サミットでチキンカツとキャベツと、100円ローソンでバケツを2つ買って帰宅した。クサノオウを巻いて吸ってみる。なにも起こらない。3、4本くらい吸ったところで、喉がかわいて仕方がなくなった。自覚症状といえばそのくらいで、期待したようなトリップ効果はなかった。もっともクサノオウが十分に乾燥されていないので、満足に燃焼しなかったのかもしれない。まずは天日干ししよう。