くおん姫のチェキについて 2017/5/29 Ⅱ

 脳を使え。行動力が無くて悩んでいるなら景気よく行動する方法をブレインストーミングしろ。ブレインストーミングする気力もないなら気力のでる方法をブレインストーミングしろ。知識人かぶれよ、お前、脳で仕事をしたいと考えているなら、詩で財産をつくりたいと望んでいるなら、とにかくその卑しい苦役で身体を痛めつけながらも、脳を使い続けるのだ。考えろ。シンク! ガッデム! シンク! 考えるのも面倒なら考えるのが面倒でなくなる方法を考えろ。考えろ。考え抜け。脳を疲労困憊させておけ。脳を思考のマラソンに慣れさせておくんだ。くれぐれもネガティヴな考えを弄くり回して遊ぶその自傷癖みたいのを継続してはいけない。捨てろ。そしてブレインストーミングだ。苦役は仕方ない、ボトルネックだ。1日に9時間拘束されるのは仕方がない。その9時間のうち、ずっと思考を続けてみたまえ。9時間が5日続けば45時間のビズだ。ライフハックブレインストーミングで上昇志向だ。いいな。アガっていくんだ。イケイケだぞ。不遇を嘆く暇があったら考えろ。脳だ。おれの剣は脳だ。
 きょうは銀行へ行き、マルスピュミラですっかり軽くなった財布に多少重量を取り戻させ、昼、家系ラーメンを食した。初めの5口くらいまではこれ以上なく旨いのだが、終盤に向かうにつれて胃の方が悲鳴を上げてくる。2日酔いの身体にはちと重すぎる食事だった。苦役の方は今までにない華麗な怠業をキメてやった。1時間ルーティンのうち、3分作業をしたら残りの57分は勝手気ままに将来の計画を練ったりしていた。17時に酷いヒステリー球の発作が訪れる。これはダメだ頓服薬を飲まなければとても立っていられない。しかしリスペリドンを飲むと、経験上、仕事があまりに辛くなることをおれは知っている。リスペリドンは精神を落ち着かせ身体の症状を軽くするが、やる気はまるで無くなり、指一本動かすのも億劫になるのだ。これはおおげさな表現かもしれんが、しかし、労働するのに必要なだけのドーパミンが欠乏するのは確かだ。だからおれは苦役が終わるまでガマンするしかなかった。苦役が終わったらリスペリドンを啜ろう。さて苦役を終えると見慣れない番号から電話がかかってきていた。果たして相手は家族であった。借財するから保証人になれという。おれは二つ返事で請け負ってやった。おれのような風来坊の名義なんざ、好きに弄ぶがいいさ。返済代替能力にはせいぜい期待しないことだな。
 品川行きの電車のなかでリスペリドン内服液を飲む。チューブをずっとおしゃぶりみたいにくわえたまま、車内でこの文章を書いている。リスペリドンはグレープフルーツの皮みたいな味がする。こいつがおれを楽にしてくれる。パパッと、雑念を振り払ってくれる。
 さて、昨日の痛飲は愉快だった。奴隷のおれと、フリーランス作家と、大学職員と、ホストとが集まって4人でマルスピュミラで飲んだ。どうも大学職員の紳士殿は愛嬌があってたまらない男で、おれは彼に酒をどんどん飲ませたくて仕方がなかった。だからおれが率先して杯を乾かし、彼にもそうするよう勧めた。半ば強要した。そうして真っ先に酔いつぶれたのがおれであった。ホストは素晴らしいトーク力で姫から様々な情報を引き出していた。おれなんぞではとても聞き出せないようなことまで、たったの1時間の滞在で相手に洗いざらいぶちまけさせていたから凄い。顔立ちも美しく、男のおれでも惚れ惚れするような武士だった。大学職員殿はそれなりのペースで飲みながらもそれなりに楽しんでいる様子だった。フリーランス作家も同様の過ごし方をしていた。おれだけはバッコスの霊験に撃たれ、くおん嬢にやたらと面倒な絡み方をしていたように思う。もっともくおん嬢は「面倒だなどとは思っていない」とのことだったし、彼女は彼女自身の言葉を是非おれに信じて欲しいというから、おれはそれを信じる。彼女はおれを迷惑に思っていなかった。おれの哀れな恋心を。おれの野蛮な恋心を。まこと機知ある郷士アロンソ・キハーノの、ドゥルシネーア・トボーソ姫に対するが如き恋心を。実際おれはライオンの騎士、ドン・キホーテだ。自分を騎士だと思って暮らしていたのに、20を越えてやっと己が奴隷であると気づいた。しかし彼はその事実を受け入れることを拒み続けている。おれは中途半端に正気付いて苦しんでいるドン・キホーテの蛹だ。己が王でないから、絶望して死ぬ。キュルケゴールがそんな病を類型化していたような気がする。かの著作をちゃんと読んでいないからおれには詳しく分からない。読者諸賢の教えを乞う。

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 貯まりに貯まったポイントカードを1つ消費して、くおん嬢とツーショット・チェキを撮った。これはおれたち2人が計画している、騎士叙任式の予行演習だ。おれのバリザルドをくおん嬢に預け、くおん嬢はこれを祝福し、おれの首に刃を当てる。そうしておれの命は永遠にくおん嬢のものとなる。その日からおれは、くおん嬢だけに忠誠を誓う比類無き雄壮の騎士となるのだ。その式典をチェキにしようと計画している。角度や剣の持ち方やら、色々と研究が必要だから事前に数枚撮りたい。本番、一番いいやつを撮ってこれを一生の記念とし、苦難にあっては己が何者かを思い出すためのひとつのお守り、アイコン、モージョーとしたい。チェキを入れることの出来るロケット(locket)なんてのは売っていないのだろうか。そんなアイテムがあれば嬉しいのだが。件のチェキを首元にぶらさげて日々愉快に暮らせるだろう。完成したチェキにはこう書いてもらう予定だ。「たけるんを、くおんだけの騎士(ルビ:シュヴァリエ)に叙する」。