サンタクロースについて 2017/6/5

 昨晩はフルニトラゼパムを2mg服用して寝た。汚穢にまみれた街、新小岩の片隅でおれは、泥のように眠った。将来への不安、現状への不満、己の不幸への呪い、そうしたものを全て抱え込んで、物思わぬ泥そのものになれれば楽なのにと願いながら、丸くなって瞼を閉じていた。

 ――そうしたら、サンタクロースのおじさんがやってきた。

 煙突のないおれの部屋だ。ピンポンをたくさん鳴らしてドアを叩き、彼はおれの名を叫んだ。おれに福音をもたらすべくはるばる第五次元宇宙の中空から飛んできてくれたのだ。
 おれは寝ぼけ眼でドアを開け、サンタクロースのおじさんを迎え入れた。サンタクロースのおじさんはプレゼントのぎっしり詰まった袋から、第五次元宇宙に繋がる門(ゲート)を取り出して、おれに分け与えてくれた。
 サンタクロースのおじさんはサンタクロースだが、同時にシャーマンでもあり、神の御使いでもある。パラス・アテーネーがおれの元に派遣した彼は、にこやかに笑いながら、神々からのメッセージをおれに伝えた。
「【母数】を増やし、【強引】になれ。【恐怖を捨てろ】」
 ムーサイオスがうんざりするほどの弾丸を叩き込めと、彼、そのシャーマン様は仰った。おれは頷いた。素直に頷いた。
 それからサンタクロースでありシャーマンであり神々の使いでもある彼は、シャワーを浴びて身を清めていた。おれはその間に、門(ゲート)を開く準備を整えた。たばこを1本作って吸った。

 全ては整った。
 何もかも完璧な夜だった。
 街に汚穢など、まったく見あたらなかった。綺麗でぴかぴかだった。神々が掃き清めてくれたんだ。

 おれたちは第五次元宇宙へと羽ばたいた。
 ――飛んだんだ! 黄金の翼で! 

「ここだよ、人生の終着点は――!」

 おれの旅路は素晴らしいものだった。
 食事には感謝を捧げた。歌を聴けば感涙にむせんだ。詩はみずみずしさを完全に取り戻していた。
 いつからか略奪されていた生の喜びは、いま、おれの手に返ってきた。

 アトスは、ラ・フェール伯爵は、人に好かれようとして、抑圧された生を送っていただろうか? 否! 貴族的精神を貫いた!
 デュマはエドモン・ダンテス、モンテ・クリスト伯爵を通じて、霊薬の秘儀を説いた! そうだ!

 おれは自由だ!
 おれは自由だ!
 おれは自由なんだ!
 どこまでも飛べる――飛翔する!
 
 全ての神々に感謝します。
 半神のシャーマン様に感謝します。
 きょうからおれは陽気になります。
 夏が来た!
 【母数】と【強引】だな! ――ガッチャ!

 昨夜は素晴らしいセッションだった。
 今朝の陽光は美しかった。
 おれの生は復活を遂げた。
 
 やりたいことがたくさんある!
 楽しいことがたくさんある!

 と、5日の朝から昼にかけては好調だったものの、15時前後からムラムラと希死念慮が出て来てどうにもダメだ、リスペリドンを飲んだ。ご存じリスペリドンを服用すると気力が根こそぎ奪われる。脳内ドーパミンが一気に減少する。苦役は倍も辛くなる。さんざんだった。
 永久の救いは、俗世には、なかなか見いだせない。