自殺について 2017/6/6

 きょうも早朝覚醒して5時頃に起きた。アラームが鳴る前に起きてしまう。カフェインとニコチンを入れて身支度をすませる。メダカに餌をやり、水面に浮かぶ油膜をとってやる。アナカリスが随分たくましく成長している。白メダカ、青メダカはあいかわらず産卵してくれない。きょうは仕方がないだろう。気温が低いのだ。
 果たしておれは成功できるのだろうか。神のみぞ知る。おれの思うほどすぐに成功できなかったらどうするのだろうか。とりあえずあと400回くらい出勤したらいまの苦役はやめる。派遣にでも登録して日銭を稼ぎながら、次の計画を練るだろう。
 朝は気分がいい。昨夜酔ったからかもしれない。昼になるとまたダメになるのは目に見えている。きょうはクリニック受診の日だ。あと、公共料金の支払いを忘れちゃいけない。
 朝食は米と味噌。昼食は米と塩を予定している。夕食はタンパク質やビタミンを摂取しないといけない。
 幸運なことに総武線快速で座れた。だからこの文章を書けている。もう品川に着く。あっという間だ。新小岩は都心へのアクセスが意外とよい。
 いま、苦役先のオフィスで初めてポメラを開いてみた。始業前の数十分、駅前でたばこをふかしているよりはずっと生産的だと思ったからだ。苦役先の連中に「それなに? パソコン?」とかなんとか、色々詮索されそうなのだけは気になるが、いちおう文字サイズを最小にして、のぞき込まれても内容がすぐには解らないように対策してある。
 苦役先でおれは新卒として扱われている。要は将来の幹部候補生の総合職で、即戦力ではないから若いうちの給料なんてのはお慈悲だ、上げた利益に対する対価ではない。で、おれはキリのいいところで辞めてやろうと思っている。つまりはおれは泥棒だ、給料泥棒だ。精神的の鞭で叩かれるのも、連中の、泥棒に対する仕打ちだ。正当な振る舞いだ。そう考えればいくらか気分が軽くなる……いや、そうでもないか。とにかく安月給だが、もらえるものはもらって生活を維持していこう。あとはおれの手がしっかりと動くかどうかだ。おれのビズが捗るか否かにかかっている。おれの将来は。おれの生は。所詮「おれは泥棒だ」などというのも負け犬の遠吠えみたいな解釈で、しっかり1日9時間拘束されているんだから仕方がない。惨めに吠える他ない。苦役先の連中からは「決して辞めるな、給料泥棒の汚名を返上せよ、向こう10年は働いて利益を生み出せ」という無言の圧力をかけられている気がする。おれは根が真面目で、それ以上に小心者だから、この圧力にあらがうだけでエネルギーを消耗してしまう。困りものだ。おれと苦役先の連中とは、単なる契約関係に過ぎないのに。道徳とか倫理とかを連中は持ち出す。おれもそれをともすると受け入れてしまう。危険だ。
 ところで昨晩は平和を知った。「平和を知った」というのは隠語だ。おれにだけ分かればよい言葉だ。まあ――つまりは気持ちよく酩酊したってことなんだが。Vivat Bacchus! 過去日記に出てくる「支援する」というのも隠語で、これは「紫煙をくゆらす」という意味だ。たばこに何か罪悪感を覚えていた頃は、そんな言葉を使っていた。
 ポメラの電池が消耗した。誤算だ。充電を忘れた。忘れたというより、ポメラの電池の持ち時間をしっかり把握していないからこういう事態がたびたび起こる。ポメラのよいところは、こういう時、コンビニで単三電池を買えば問題が解決することだ。
 日記は心の王国だ。これを書いているだけで、ちゃんと、こう、社会とか大衆とか、曖昧模糊とした魑魅魍魎にプロテストしている気分になる。それがおれの精神の平静を保ってくれる。最近は平静でいられないことが多いのだが。
 ――15時頃が鬼門だ。
 15時頃から希死念慮が強く表れる。きょうのはとてつもない。クリニックの受診が待ち遠しかった。いま、クリニックの待合室でこの文章を書いている。手がふるえる。顔がこわばっている。病気だ。おれは正常じゃない。ついにおれはメンヘラになってしまったのか。どうしてこんなにも死にたくて、死が恐ろしく感じられないのか。客観的に自分を観察してみると、おれがおかしいことはすぐに分かる。大丈夫だ、まだ客観的に分析できるくらいには平常だ。おれの日記には死への希望が溢れている。おれの苦役先のパソコンのなかのメモ帳にも死への期待が綴られている。苦役先の物理メモ帳にも「死にたい」の子音と母音、「SNTI」を殴り書きしてある。ダメだ、こんなんじゃダメだ。もう限界かもしれない。おれはとうとうおかしくなってしまった。前々からおかしかったのが、きょう、頂点を迎えている。いやいや待て、どうしてそう無条件に死を否定するのか。死んでもいいんじゃないのか。死は慰みじゃないのか。ああダメだ、自殺する。自殺してしまう。身体中がピリピリする。脳がぼんやりしている。手がふるえる。死ね、ダメだ、死ぬな、いや、苦しめ、ダメだ、ダメだってそっち行っちゃ――。
 こんなんじゃビズできないよ。ビズできない罪悪感、焦燥感がさらにおれを責め苛む。
 気を失いそうだ。これあれか、噂に聞くパニック障害か。
 よ、陽気な話をしよう。
 油そばおいしい。武道家のラーメンとライスおいしい。お寿司おいしい。牛丼おいしい。マックおいしい。
 死ぬのは痛い。でも全部終わる。なくなるんだ。初めからなかったことになる。嬉しい。
 恥の多い生涯を送ってきました。
 なんでおれ人間なんだろう。なにやってんだ。なんでおれ奴隷(サラリーマン)なんだろう。なにやってんだ。

 受診した。入院を勧められた。休職を勧められた。
「奴隷だからダメです」
 きっぱり言ってやった。
「実家に連絡して下さいね」だとさ。
 あっこも生憎、奴隷の家庭だよ。財産がない。
 
 おれの日記がハイリゲンシュタットの遺書となるか、平凡な奴隷の遺書となるかは。
 神のみぞ知る。
 さようなら、と、どこかの誰かに言っておく。

 と、思ったけどエルをキメるまで人間やめられねーな、おれ。
 夕食はマックのポテトL2つとキャベツ。一服してから食う。チョー旨いの、これ。仙香食(アンブロシア)かよ。
 いやあ、きょうも平和を知ってしまった。